2024年11月5日に行われるアメリカ大統領選挙で、ドナルド・トランプ氏が、再び大統領に就任する可能性が取り沙汰されています。
彼が就任した場合、日本経済、特に自動車産業は大きな影響を受ける可能性があります。
トランプ大統領誕生が、日本の自動車メーカーに与える影響について、プラス面とマイナス面をそれぞれ5つずつ分析します。
プラスの面
規制緩和によるコスト削減
トランプ氏は前回の政権時、「米国第一主義」を掲げ、国内産業の保護と雇用創出を最優先事項に掲げていました。
その一環として、オバマ政権時代に強化された環境規制や燃費規制などを、大幅に緩和しました。
もしトランプ氏が再び大統領に就任した場合、同様の規制緩和路線が再び進む可能性があります。
自動車メーカーにとって、規制緩和はコスト削減に直結する魅力的な政策です。
特に、電気自動車(EV)への移行が加速する中で、燃費規制の緩和は、従来型のガソリン車に依然として依存する米国メーカーにとって、大きなメリットとなります。
開発コストや生産コストを抑えながら、価格競争力を維持することが可能になるからです。
規制緩和は、日本車メーカーの米国における事業コスト削減にも繋がり、収益改善に貢献する可能性があります。
これにより、日本の自動車メーカーが、アメリカでのビジネスを展開しやすくなるかもしれません。
米国経済の活性化による需要拡大
もしトランプ氏が再び大統領に就任した場合、減税やインフラ投資など、前回の政権時と同様に米国経済の活性化を重視した政策を打ち出す可能性があります。
実際に、前回の任期中には法人税の大幅な減税や規制緩和などを断行し、米国経済は大型減税の効果もあり、一時的に大きく成長しました。
もし再び同様の経済政策が実施されれば、雇用が増加し、賃金も上昇することで、人々の購買意欲が高まり、自動車市場の活性化に繋がる可能性があります。
特に、大型車やSUVなど、高価格帯の車種を中心に需要が拡大する可能性があります。
日本のトラックや重機メーカーにとっても、恩恵となるかもしれません。
米国経済の活性化による経済成長は、自動車需要の増加に繋がり、日本車メーカーにとっても、プラスに働く可能性があります。
日米関係強化による国際貿易の見直し
もしトランプ氏が再び大統領の座に就いた場合、日米自動車貿易は新たな局面を迎える可能性があります。
トランプ氏は、前回の任期中に、貿易赤字の削減を最重要課題として、各国に対し強硬な姿勢で貿易交渉に臨みました。
日本に対しても、自動車や農産物などを巡り、厳しい要求を突きつけました。
しかしトランプ氏は、日米同盟の重要性を認識しており、日米関係強化にも積極的でした。
良好な日米関係は、日本企業にとって政治リスクの低下に繋がり、安定した事業展開を後押しします。
またトランプ氏は、中国との貿易関係に積極的に介入していて、日本製品がアメリカ市場での競争力を増す可能性があります。
円安誘導による価格競争力強化
トランプ氏が得意とする「ドル高誘導」は、輸出企業にとって大きな追い風となる可能性を秘めています。
もし、トランプ氏が再び大統領に就任し、大規模な減税や財政支出拡大といった政策を打ち出した場合、米国経済は活性化し、金利上昇を通じてドル高が進む可能性があります。
一方、日本は長らく低金利政策を維持しており、日米間の金利差拡大によって、円安が進むと予想されます。
輸出の約4割を占める自動車産業にとって、円安は大きな追い風となります。
円安は、輸出する自動車の価格競争力を高め、販売台数の増加や収益改善に貢献すると期待されるからです。
特に、米国市場は日本車にとって重要な市場の一つであるため、円安による価格競争力強化は、米国市場でのシェア拡大に繋がる可能性があります。
米国企業との提携強化
トランプ氏の次政策は、自動車産業においても、日米企業間の提携関係に新たな局面をもたらす可能性を秘めています。
日米企業間の提携強化が、進む可能性も考えられます。
トランプ氏は、米国経済にとって利益になる取引を重視する姿勢を示しています。
そのため、日系自動車メーカーが米国企業との間で、技術提携、共同開発、生産委託など、互恵関係を明確にした提携を積極的に進めることで、米国側の理解と協力を得られる可能性があります。
例えば、自動運転や電動化など、次世代技術分野における提携は、両国にとってメリットが大きく、トランプ政権も歓迎する可能性があります。
また、米国での工場建設や雇用創出に繋がる提携は、トランプ氏の支持基盤である製造業の労働者からも歓迎され、政治的な追い風にもなり得ます。
マイナスの面
保護貿易主義による市場縮小
トランプ氏の予測不能な言動は健在であり、再び日本に対して強硬な姿勢で貿易交渉に臨む可能性も否定できません。
日本車に高い関税を課すなど、保護主義的な政策に再び舵を切れば、日系メーカーはコストが増加し、日本車の米国販売は大きな打撃を受けることになります。
国際的な貿易摩擦激化
日米間で貿易交渉が難航した場合、政治的な不安定さがビジネス環境を悪化させる可能性があります。特に関税や輸出制限が課されるリスクがあります。
またトランプ氏の保護主義的な政策は、中国などとの貿易摩擦を激化させる可能性があります。
世界経済の不透明感が増大すれば、日本車メーカーの業績にも悪影響が及ぶ可能性があります。
国際協調の弱体化
トランプ氏が多国間貿易協定に否定的な立場を取る場合、日本の自動車メーカーはサプライチェーンの不安定化に直面するかもしれません。
トランプ氏は、米国での雇用創出を重視しており、日本車メーカーに対して米国での生産拡大を強く求める可能性があります。
生産体制の見直しを迫られれば、対応コストの増加が必要になる可能性があります。
環境規制の変化
トランプ政権は、環境規制を緩和する可能性があります。
環境性能で世界をリードしてきた日本車メーカーにとって、環境規制後退はブランドイメージの低下に繋がりかねません。
環境意識の高い消費者を、遠ざけるリスクも孕んでいます。
環境規制が緩和される一方で、消費者の環境意識が高まる場合、日本メーカーのハイブリッド車や電気自動車への需要が変わる可能性があり、市場戦略の再考を迫られるかもしれません。
さらに、長期的な視点で見れば、規制緩和は技術革新を阻害する可能性もはらんでいます。
厳しい規制は、企業にとって負担であると同時に、技術革新を促す側面も持ち合わせています。
規制緩和によって短期的な利益を追求するあまり、長期的な競争力を失う可能性もあることを、自動車メーカーは忘れてはいけません。
政治的不確実性
トランプ氏の予測不能な政策は、政治的な安定性を欠くことがあり、それが事業計画に影響を及ぼすリスクとなります。
まず、トランプ政権下では保護主義的な政策が強化される可能性があり、貿易摩擦激化による世界経済の減速は、米国経済にも悪影響を及ぼす可能性があります。
そうなれば、自動車市場の冷え込みに繋がりかねません。
さらに、トランプ政権下で懸念されるのは、財政赤字の拡大です。減税やインフラ投資は、短期的には経済を刺激する効果がありますが、長期的には財政赤字を拡大させ、金利上昇やインフレを招く可能性があります。
そうなれば、ローン金利の上昇などを通じて、自動車販売にブレーキがかかる可能性も否定できません。
まとめ
日系自動車メーカーにとって米国市場は、世界で最も重要な市場の一つです。
トランプ氏の政策は、米国経済、そして自動車市場に大きなインパクトを与える可能性を秘めています。
また、トランプ政権の動向を注視しつつ、米国市場への依存度を軽減するため、生産拠点の分散化や、他地域への販売強化など、あらゆる可能性を視野に入れた戦略を、練っておく必要があると言えるでしょう。
今後の動向を注意深く見守りながら、柔軟かつ戦略的な対応を取ることが求められます。